カテゴリ:003 猫( 1 )

003








こんにちは、猫です。
名前はあります。
しかしいくつもあるので、どれが本当の名前なのか知りません。
まぁ僕には関係のないことです。

最近はまっていることは、コインランドリーの見張りです。
いつもじゃありません。
ある女の子が中にいるときだけです。
彼女の名はイツミです。
小さな女の子です。
あとのことはよく知りません。

僕はいつも、あのぐるぐる回るものは何だろうと思いつつ
『前島コインランドリー』の前を通り過ぎてたわけです。
イツミは最初、お父さんに手をひかれてやってきました。
小さな子がそこに入っていくのを初めてみたので、
僕は入り口から顔を出し中の様子をちょっと覗いてみてました。

2人はまず洗濯機の前に立ちました。
僕も洗濯機のことは知ってました。
木村さんちで痛い目にあったことがあるのです。
それいらい、少し苦手です。

イツミのお父さんは背の大きな人でした。
痩せていました。ヒゲがうっすら生えてました。

洗濯が終わると、2人は協力してぐしゃぐしゃした服を出し、
円いドアのついた機械に入れてました。
コインを入れると、それらはぐるぐる回りだしました。

それでようやくわかったのです。
お金をいれて、遊ぶ。
こういうの、丸橋ゲームセンターで見たことあります。
あんまり子供だけでしちゃいけないことです。
いつだか、渡辺さんちのカズキが怒られていました。

イツミは円いドアに顔をつけて、
いろんな色のシャツや靴下がぐるぐる回るのを
すごく楽しそうに見てました。
丸橋ゲームセンターはうるさいから大嫌いだけど、
これは楽しそうだなぁと僕も思いました。

それから3日後ぐらいに、
イツミが一人で歩いているのを見ました。
腕には大きなバックをぶらさげてます。
そっと後をつけると、イツミはコインランドリーに入っていきました。
僕はドキドキしてました。
誰かに見つかったらイツミは絶対怒られるからです。

椅子に登って洗濯機の中を覗きこんで、
少し重そうにしわしわの服を取り出すイツミは楽しそうでした。
小さな財布から百円玉を取り出し、
背伸びしてあのぐるぐる回すゲームをしている姿を
僕はじっと見ていました。
回転がゆっくりになり、完全に止まってしまってもイツミはしばらくそこを動きません。
やがて決心したように服を機械からひっぱりだします。
大きなシャツが何枚もあります。
大きな靴下もあります。
たぶんお父さんのをこっそり持ってくるのでしょう。
いけない子です。
でも、とても可愛い子なんです。


それから僕は、イツミがくると
コインランドリーの見張り番をすることにしました。
僕はイツミが怒られるのを見たくないのです。


だから、このことは
大人達には内緒ですよ。










[PR]
by Dasein100-1 | 2004-10-04 22:13 | 003 猫